相続人の中に行方不明者がいる場合の相続手続き(失踪宣告)
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相続人の中に行方不明者がいる場合の相続手続き(失踪宣告)
故人が生前遺言書を遺していれば、その遺言書の中で財産の譲受人として指定された者が「単独で」不動産等の名義変更手続きを行うことができます。
しかし、遺言書が無い場合、「相続人全員で」遺産分割協議を行う必要があり、一人でも相続人が欠けた状態で行われた遺産分割協議は無効となります。これは連絡が取れない行方不明の相続人がいる場合も同様です。
Q:では、行方不明の相続人がいる場合、どのように手続きを進めればよいのでしょうか?
A:このような場合には、家庭裁判所に、行方不明者の財産を適切に管理する人として「不在者財産管理人」を選任してもらい、その者に行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加してもらって相続手続きを進めることができます。
また、行方不明になってから7年以上(戦災や天災により遭難となった場合は1年以上)が経過している場合には、家庭裁判所に「失踪宣告」を請求することができ、失踪宣告が認められれば7年間(または1年間)の期間満了時に行方不明者は死亡したものとみなされますので、代襲相続となり、その行方不明者の相続人が遺産分割協議に参加して相続手続きを進めることができます。
◎分かりずらいかと思いますので、失踪宣告が認められた場合の相続手続きについて(例)を挙げてみます・・
(例)亡父は遺言書を遺さずに亡くなりました。母も既に亡くなっていて、相続人(子)は長男、次男、長女の3人です。しかしここで、次男とは10年以上も連絡がつかず、所在も生死も不明となっています。そして次男には、子供が一人います。
⇒⇒この場合に、次男が行方不明となってから7年以上連絡が取れていませんので、家庭裁判所に対し、不在者財産管理人選任の申し立てを行なうのではなく、「失踪宣告」の申し立てを行ないます。そして次男の失踪宣告が認められると、次男は死亡したものとみなされますので、その子供が代襲相続人となり遺産分割協議に参加します。結果、長男、次男の子供、長女の3人で遺産分割協議を行い、相続手続きを進めていきます。
◎では、
Q:失踪宣告を受けた者が生存しており、所在も判明した場合、既に代襲相続人へと相続された財産はどうなるのでしょうか?
A:家庭裁判所に対し、失踪宣告を取り消す請求をし、これが認められた場合、代襲相続した財産は(元々の相続人である)行方不明となっていた相続人へと返還する義務があります。但し、既に遺産分割協議が済んでおり、他の相続人の財産となったものについては返還する義務がなく、返還を請求することもできません。
最後に・・
ご自身の相続についてお考えになったとき、相続人の中に連絡が取れず、行方の分からない方がいる場合には、必ず遺言書を遺し、財産を譲り受ける方を指定しておきましょう。
そして、もしお亡くなりになった方が遺言書を遺していない場合、相続人の中に連絡が取れず、行方の分からない方がいる場合には、相続人の方々がご自身で手続きを進めることは困難でしょう。
遺言書について、あるいは行方不明者の手続きについて、ご相談やお困りごとがございましたら、まずはアット.法務オフィスにお問い合わせください。
著者
稲葉 尚士(いなば たかし)
神奈川県司法書士会所属
登録番号:第1111号
簡易裁判所訴訟代理権
認定番号:第302030号
担当分野:相続業務全般、債務整理