相続人が不存在の場合、故人の財産はどうなるの?

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相続人が不存在の場合、故人の財産はどうなるの?
近年、少子高齢化が進み、おひとり様が増えているなか、亡くなる時に身寄りがいない高齢者が増えています。
では、相続人がいないまま亡くなった場合に、残された財産はどこにいくのでしょうか?
その財産は国庫に帰属することになりますが、故人と生計を共にしていた内縁の配偶者等は、故人が遺した財産を譲り受けることはできないのでしょうか?
まず、相続人の不存在とは、法定相続人がいない場合だけでなく、すべての法定相続人が相続放棄をした場合も含まれます。
その他に、故人を殺害したり、強迫して遺言を書かせたりすると法定相続人としての資格を失うこともあります(これを「欠格」と言います。)。また、故人に対する虐待、重大な侮辱、著しい非行をした場合に、故人の意思によって法定相続人の資格を剝奪されることもあります(これを「廃除」と言います。)。このように欠格や廃除によって、法定相続人が一人もいなくなった場合は、やはり相続人不存在となります。
◎では、相続人が不存在の場合、故人の財産はどうなるのでしょうか?
①遺贈がある場合・・
故人が遺言書を遺していて、その中で特定の者に対して遺産を贈与する(遺贈)旨が記されている場合、遺産はその特定の者に帰属することになります。
ここで、遺贈を受ける者は、個人でも法人でもよく、生計を同じくしていた内縁の配偶者や生前にお世話になった知人やヘルパーさん等に遺贈する場合もあれば、慈善団体等への寄付として遺贈される場合もあります。
②特別縁故者がいる場合・・
特別縁故者とは、故人に法定相続人がいない場合に、故人と特別な縁があったことを理由に遺産を受け取る権利が生まれる者のことをいいます。
故人と生計を共にしていた、或いは特別に親しい間柄にあったと家庭裁判所によって相当の関係があると認められた場合に特別縁故者となります。
特別縁故者になると、遺産の全部又は一部を受け取ることができますが、特別縁故者として財産を譲り受けようとするならば、自らが家庭裁判所に対する相続財産清算人選任の申し立て等の手続きを行う必要があります。
③国庫に帰属する・・
①②のような遺贈が無く、特別縁故者もいない場合には、遺産は国庫に帰属することになります。
また、特別縁故者がいた場合でも、その者に対して遺産の一部だけを受け取る権利が認められることもあり、その場合に残った遺産についてはやはり国庫に帰属します。
Q.もし、自分に相続人となる人がいない場合、自身の財産を国庫に帰属させるのではなく、有効活用したいと考える場合には、どうすれば良いでしょうか?
A.遺言書を作成しておくと良いでしょう。
生前お世話になった方に遺贈することで恩返しをすることもできますし、慈善団体への寄付として遺贈をすることで社会貢献をすることができます。
そして、この遺言書を作成する場合には、その中で遺言執行者を決めておくと良いでしょう。遺言執行者がいれば、遺言書の内容をそのまま執行してもらうことができます。遺言執行者には資格がないので、ご自身で自由に選ぶことができますが、執行するには専門的な知識を必要とすることが多いので、我々司法書士を予め指名しておくことが多いです。
※相続人不存在について、よくある質問。
Q.行方不明は相続人不存在にあたるの?
A.法定相続人が行方不明の場合、相続人不存在にはあたりません。
この場合、その行方不明者について、家庭裁判所に申し立てをして「不在者財産管理人」を選任してもらうことになります。そして選任された不在者財産管理人が行方不明者に代わって遺産相続手続きをすることになります。
◎まとめ・・
遺産は、ご自身が一生をかけて積み上げてきた財産です。これをご自身の意思に基づいて有効活用したいと考える方は多いでしょう。そのような方は、遺言書を作成することにより、その意思を実現してください。
そして、遺言書の作成には、その形式や内容に注意すべき点が多々ありますので、遺言書作成の専門家である司法書士に相談することをおススメ致します。
遺言書を作成するかどうか迷っている方、作成することは決めているが、今ひとつ思いきれない方は、まずはアット.法務オフィスにご相談ください。
著者
稲葉 尚士(いなば たかし)
神奈川県司法書士会所属
登録番号:第1111号
簡易裁判所訴訟代理権
認定番号:第302030号
担当分野:相続業務全般、債務整理